ごあいさつ

悠久の昔、我々の祖先は、秀麗な自然と春夏秋冬のもたらす豊かな恵みに慈しまれた、この日本列島・豊葦原の瑞穂の国に住みはじめました。その日々の営みの中にあって、一滴の水一粒の稔りにも天地自然の神々の働きを感得し、「天津神国津神(あまつかみくにつかみ)」(天神地祇)として仰いでまいりました。
また我々は、親、祖父母そのまた親と、遠い祖先以来絶えることのない永遠の生命の流れでつながっています。私どもは肉体と共に魂をも確かに受け継いでいる、この祖先をも敬ってまいりました。「神ながらの道」というのは、この天地の神の恵みと祖先につながる尊い命によって生かされていることに感謝し、それに応えるべく気高い心を保ち、いのちの力を尽くすことなのです。
こうして長い年月をかけて自然のうちに培われてきたのが、日本固有の「神道」なのです。これは「天地悠久の道」とも呼ばれ、祖先達が大自然の摂理の中から学び拓いてくれた道です。この神道が、教祖や教典で教える「宗教」と最も異なっている点は、自然そのものの中に神性を感じ取りそれと融和して生きるということと、自らが祖先神として祀られ、氏神となって子孫を守り慈しんでゆくという点です。
後世仏教など他の宗教を受け容れるにあたっても、この道は日本人の心の奥底に地下水の如く脈々と流れ、今日まで受け継がれて来ています。お正月やお盆(古くは神道の祖霊迎え)、お祭りなどはその一端の表れですが毎日の生活にも無意識に浸透しており、芸術や文化の源流ともなっています。
さてこの天神地祇や祖先神を祀るのが神社であり、全国津々浦々に氏神・産土神として数え切れない社や祠があり、四季折々のお祭りが行われているのです。
古くは詫間の郷、詫間の庄とも呼ばれたわがふる里にも、浪打八幡宮をはじめ、数多くの社が祀られています。その多くは自然発生的であり、有史以前の祭祀の原型から発展してきたものも多く、その創祀創建を特定するのは非常に困難なほど永い歴史を持ちます。
ささやかなものではありますが、この書が氏子崇敬者や未来の子孫たちと、遠い祖先の想いとを繋ぐ絆となり、自らの魂の原点を顧みるよすがともなれば幸いです。